団地でカレーをColemanに座って。

調布つつじヶ丘の神代団地は敷地内を野川が縦断し、静かに営業を続ける団地商店街と公園を背の高いヒマラヤスギが見下ろしている。高度経済成長期に建てられたこの団地も50年の月日が流れ、店舗は新旧入れ替わりながらもゆるやかに世代と姿を変遷し生活と共存している(ちなみに調布に6つの店舗をもつ手紙舎の本店はこの団地内にある)。夕刻前になるとランドセルを背負った子どもたちがどこからともなく現れては通り過ぎていく。この団地を通るのが近道のようだ。

団地の一角に「ふれあい喫茶」と文字が躍る看板を見つけ奥に進むと、妙に造りのしっかりしたColemanのチェアに腰掛け談笑する地元淑女の方々が。屋内を覗くと「カレー200円」のポップ。安い。エプロンと三角巾姿のお母さんたちがちゃきちゃきと立ち振る舞い、簡易的な喫茶店が開かれているようだった。うろうろしていると声をかけられ、せっかくなのでとカレーとコーヒーを頂く。コーヒーには「ザッキー」という見たことありそうでないお菓子もサービスでセット。しばしお母さんたちと世間話、この喫茶はいつもやってるわけではなく月に一度程度、今日は午前中が雨だったのでこの時間までカレーが残ってるがいつもなら昼には売り切れてしまうほどの盛況ぶりだという。カレーにありつけたのはたまたまのラッキーだったというわけだ。

この商店会のふれあい喫茶の取り組みは実は長いようで、巷に溢れる類似の「ふれあい喫茶」的なものは、ここを参考にして真似られたところが多いのだとか。団地の住民も高齢化が進んでおり、なかなか駅前まで食事や買い物に出られない人が多いため、このように定期で顔を合わせる会が設けられるのは喜ばれるらしい。商店会の人付き合いの風通しも良くなり、近況報告もできる。カレーは「これこれ」と無意味に頷いてしまうような、普遍性キワまる家庭的ど真ん中の味だ。

その類の全てがとは言わないが、「ローカルを開拓」だとか「コミュニティづくり」みたいな、人を繋げたり集めたりすることを一種のスキルや手段のように語る風潮が最近多いように思う。でも、リードされ用意されたものよりも、「ないよりはあったほうがいいよね」レベルで自然発生したもののほうが息が長く、それでいてシンプルな魅力があったりもする。古びた街の隅っこだろうが高齢者だろうが楽しみや遊びは勝手につくるし、それが「なんだかイイ感じ」だったらまた来る。小難しいロジックより「カレー」が強い場合もある。

訊くと、昼のこの「ふれあい喫茶」とはまた別に、月に一度夜に開催される「居酒屋じんだい」というビュッフェ方式で料理を食べながら持ち寄ったお酒を飲み交わす会も存在するらしい。会費はたったの500円。嬉しいことに「お兄ちゃんも今度おいで」と誘われた。どこの街にも楽しい遊びは転がっているものだ。

文・写真/松岡 真吾

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