デンジャーガーデン 〜東京都薬用植物園〜


彼岸花の季節だ。夏から秋へと空気が変わるころ、いつの間にか緑だった田んぼが赤と黄金色に染まると、嬉しくなってくる。田んぼのあぜ道に咲くこの花を見て育ったし、通学途中に手で折って持ち歩いていたら、近所のおばあさんにしこたま怒られたりもした。その時は毒があるなんて知らないから、なんでこんなに怒られるのか不思議に思っていた。思い出深い花の一つだ。

その毒々しいまでに赤い花の色がどこか不気味で、不吉とされることが多い。日本的ホラー演出には欠かせない存在だ。実際彼岸花は有毒で、摂取すると最悪死に至ることもあるらしい。「一口食べればその後は彼岸(死)しかない」というのも名の由来の一つなのだ。

怖くて不吉な彼岸花を見ていると、なぜだか行きたくなる場所がある。彼岸花の名所でもなんでもなくて、「東京都薬用植物園」だ。不思議と有毒植物のことをもっと知りたくなる。「きれいな花には棘がある」とはよくいったもので、可憐な花弁をつける植物に猛毒があると思うととたんにストーリー性が生まれてくるような気がして、ワクワクゾクゾクする。


「植物園」と聞くと、ゆったりと散歩を楽しみながら歩く老夫婦とか、花見てる?と思わず突っ込みたくなるカップルとかが休日に訪れるような、優雅で平和なイメージが先行する。しかし、この植物園は見た目はどこか地味だ。「花が咲き乱れ華やいだ雰囲気」とは程遠い。
西武拝島線東大和市駅から徒歩1分ほどの場所に立地し、その名の通り薬用の植物を収集・栽培している施設なのだ。

「オミナエシ」 根は利尿、排膿の目的で漢方処方に配合される。秋の七草の一つ。

「ノゲイトウ」 強壮・消炎薬として配合される。

「漢方薬原料植物区」や「製薬原料植物区」、「染料・香料植物区」などの14のゾーンにわかれ、薬用植物が栽培されている。この辺はいたって平和だ。そばにつけられている説明書きを読みながら鑑賞すれば勉強にもなる。知らないことも多いし、名前はよく聞いていても実物を見たことがないものを実際に見ることもできる。





しかし今回の目的は「有毒植物」だ。園内の有毒な植物の説明には、かならず有毒であることが示されている。赤い文字で書かれた「有毒植物」という言葉にドキリとする。



中でも、「有毒植物区」は、「皮膚炎」や「下痢・嘔吐」などのかわいいもの(かわいくはない)もあるが、平和なイメージの植物園で目にするとは思わない「死亡」という言葉が散見する。


身近な植物にも危険は潜む。これからの季節、酒のお供に最高な「銀杏」を食べすぎて死亡した例があるらしい。

そして、この植物園の最大のハイライト「ケシ・アサ試験区」。麻薬であるアヘンの原料となるため、日本では栽培が禁止されている「ケシ」が東京で唯一みられる。地味だなんだといいつつも、基本的には開けた場所なのだが、このゾーン一帯は2重のフェンスで覆われ、有刺鉄線が張り巡らされていて物々しい雰囲気が漂う。


しかし、年に1度花の見頃の5月になると、外側の柵が開放され、少しだけ近づくことができる。


ケバケバとした赤は、彼岸花にも通ずるものがある。人々を惑わす魅惑的な見た目だ。


彼岸花も、ケシも「危険」なイメージだが、彼岸花は利尿や去痰作用がある生薬でもあるし、ケシやアヘンは鎮痛、鎮咳薬の原料としても使われている。「毒」と「薬」はどんな場面でも表裏一体だ。死が間近に迫ったかと思えば、また別の場面では死が遠のく。自然の力は偉大だ。

薬用植物園は「植物を愛でる」というよりも、「植物を知る」ための場所だ。植物に興味がなくても、話しの「種」が尽きることはない。

写真・文/一楽まどか

東京都薬用植物園

小平市中島町21-1
042-341-0344
4月~9月  9:00から16:30まで/10月~3月  9:00から16:00まで
月曜・年末年始休み

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