WEST TOKYO 仕事図鑑 VOL.05 貸しボート屋

◯多摩川と共に生きて

 狛江がまだ農地ばかりだった昭和17年、谷田部靖彦さんは多摩川の「渡し」を営む家に生まれました。以来、多摩川と共に人生を歩んできた谷田部さん、鉄道や橋が開通し、渡しが役割を終えた後は都心からやってくる水遊びの人々のために5隻の船から貸しボート屋を始めました。
 狛江市の「たまりや」と、川を挟んだ対岸の川崎市に位置する「のんきや」、このふたつの貸しボート屋を地元の人々に愛されながら続けてきましたが、のんきやはまちの開発工事により閉店、長い歴史に幕を下ろしました。今は残った「たまりや」を谷田部さんは丁寧に手入れをしながら営業し、開放的な風が吹き抜けるペンキ塗りの休憩所はジョギング中の人や釣り人がふらりと訪れ、子どもたちがラムネソーダを買いにやって来る憩いの場となっています。店の営業と共に多摩川漁業協同組合の支部長も務める谷田部さんは、稚魚の育成や川の地盤の維持など自然を保つための取り組みにも真摯に向き合います。
 時代の流れと変化に寄り添いながら、谷田部さんは静かに優しく見守り続けています。

【Photo Gallery】

文・写真/松岡真吾

つちもちしんじ

1979年生まれ東京都出身。漫画イラストレーター。古典的マンガ、浮世絵、絵画、ポップアート、ポップソングなどから刺激を受けながら漫画やイラストを製作。東京の下町の風景を切り取ったweb連載「下町百景」シリーズが国内外から大きな反響を呼び、2016年に「東京下町百景」として書籍化。普遍的なノスタルジーを含みながらも独自のフィルターを通して紡がれる世界観は唯一無二の奥行きを持つ。

tsuchimochishinji.com

twitter:@wabisabipop

たまりや
9:00〜16:00頃まで/天気により不定休/狛江市東和泉4-9-8/小田急小田原線和泉多摩川駅徒歩6分/電話なし

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