初対面「ラマパコスのせきちゃん」

ライター根岸達朗の「初対面」を記録する連載。第4回目は、国立・谷保で住居兼店舗「ラマパコス」を営む、造形作家のせきちゃん(関田孝将さん)です。

根岸 せきちゃんはものをつくる人なんですね。

関田 そうなんですよ。スプーンとか鍋とか、そういうのをいろいろと。

根岸 すてきだなあ。それは自分の作品をつくっているような感覚なんですか?

関田 作品というよりは、セッションに近いんじゃないですかね。基本はお客さんありきのコミュニケーションですから。

根岸 セッションか。僕もインタビュー仕事をしているときはそんな感覚があるかもしれない。

関田 文章を書くんですね。

根岸 そうですね。仕事としては、なんだかんだで10年以上になるなあ。

関田 へえ。

根岸 書くのはきらいじゃないですけど、表現手段は文章だけじゃなくてもいいのかな、というのは最近思うところですけど。

関田 僕もそうかもしれないですね。ものづくりだけにこだわってないから、いろいろやっちゃうし。

根岸 そうなんですね。

関田 うん。ただ、僕はものづくりでお金をいただいているし、それで生活しているという部分も大事にしています。……現実的な話になっちゃいますけどね。

根岸 でも、ものづくりは好きなんですよね?

関田 うん。なんていうのかな……僕がものづくりをするのは、その生き方をしたい、みたいなところもあるから。

根岸 その生き方。

関田 僕は普段、自分の身の回りのもの、暮らしのものをつくっているんです。それで、ゆくゆくは家を一軒つくりたい。自分の暮らしに関わるものを自分の手でつくっていくことを楽しむ生き方がしたいんです。

根岸 いいですね。

関田 だから僕にとっては、僕のありたい姿を目指していくスタイルが丸ごと作品なのかもしれないですね。ただ、今は一個のものとしての作品もつくるし、そうでないものもつくります。その両方が今の自分にとっては必要だから。

根岸 僕は自分のことをエッセイに書いたりするんです。でも、そういう表現活動ってゴールがあるようなものじゃないですよね。終わりがないことをやっているというか。

関田 そうですよね。

根岸 だからこそ、僕はゴールがないことを丸ごと楽しめるような人間でありたいんです。いい人生は、そうやってあらゆるプロセスを結果以上に楽しんでいる人生だと思っているから。

関田 それでいうと、僕にとっての家を建てるという夢も、結局ひとつの地点でしかないんでしょうね。たぶん僕は、建ててからもずっと何かをいじっていると思う。永遠に完成しない建築みたいな感じでね。

根岸 ところでせきちゃんは、普段の生活では、どんなときに楽しいと感じるんですか?

関田 楽しい……うーん、楽しいか……なんだろう。

根岸 やっぱり何かをつくってるときが一番楽しいですか?

関田 ものづくりは楽しいことだけど、そう言われるとなかなかむずかしいですね。それこそ子どもが生まれてからは、ひとりの時間がなくなったりして、それまで好きでやっていたようなことができなくなったというか、やらなくなったりもして。

根岸 ああ、わかります。

関田 そうだなあ……おいしい夜ごはんを食べているときが楽しいっていうか、幸せを感じますね。ちょっとお酒とか飲んでさ。仕事のプレッシャーとかも忘れてね。あとは寝るだけみたいな状態? ……疲れてるのかな。ははは……。

根岸 みんなで食べる、おいしいごはんは楽しいですよね。あと、僕はみんなのためにごはんをつくったり、家事をしたりすることもわりと楽しめますね。それで喜んでもらえたら、単純にうれしいですから。

関田 僕も料理は好きでいろいろとつくるんです。でも、レシピとか調べないでやりたいタイプだから、妻に「まずい!」とか言われたりして。

根岸 ははは。でも、食べてくれる人がいるとやる気は出ますよね。

関田 まあ、そうですね。

根岸 僕は6年間くらい、妻と息子と3人暮らしをしていたんです。今は離婚して別々に暮らしているんですけど、一人暮らしでつくるごはんって味気ないですね。さみしいとかじゃないんですけど、なんかつまんないなって。

関田 へえ。

根岸 張り合いがないっていうのかなあ。一人暮らしを始めて、ひとりの領域って人にとってどれくらい必要なものなんだろうとかも考えてましたね。それには個人差があるような気がするというか。

関田 旅とかしてました?

根岸 してないです。してました?

関田 そんなでもないです。でも今思ったのは旅行とか行ったときにきれいな景色を見て「ああいいねえ」って言える相手がいた方がいいのか、いない方がいいのかっていうことで。

根岸 どっちかっていうことではないんじゃないですか。人には両軸が必要っていうか。

関田 そうだよね。

関田 ここ、僕のお店です。

根岸 へえ。ここが。

関田 上に住んでるので、自宅兼お店ですね。たまにしか開けてない店なんですけど。

根岸 どういうときに開けるんですか?

関田 今のところは、イベントをやるときとか。器の展示会とか、ミニライブとかね。人が集まるようなことをする場所って感じですね。

根岸 内装は自分でやったんですか?

関田 そうそう。好きでね。

根岸 すごい。何でも自分でつくっちゃうんだな。そもそもですけど、どうしてものづくり始めたんですか?

関田 美大に入ったのをきっかけに、本格的に始めたんです。それまでは人に見せられるようなものが自分でつくれると思ってなかったんだけど、美大ではみんなどんどんつくるでしょう。僕も工房を借りてつくっているうちに、人に見せることに対する恥ずかしさみたいなものがなくなっていって。

根岸 へえ。

関田 文章とかもそうじゃないですか?

根岸 文章か。そうかもしれないですね。最初はひどいものだったと思いますけど、たくさん書いていくうちに、自分の文章を読んで喜んでくれる人も現れたりして。小さな成功体験の積み重ねで、自信をつけていったところはありますね。

関田 僕もそんな感じですよ。

関田 でも、あれだね。最近はお金のこととか考えちゃうんだよね。もっと稼ぎたいなとか。ものづくりは楽しいんだけど、それで疲れちゃうことがある。これからもう一人子どもも生まれるし、稼がないと…… みたいなプレッシャーが、ね。……自営業だと、そういうのないですか?

根岸 昔はちょっとありましたね。でも、最近はわりと楽観的に考えてるというか。お金なくなったら働けばいいかとか、そんな感じで。

関田 そっかあ。

根岸 あとほんとにお金稼げなくなったら、自分で食べ物つくろうかなとか。現実的なことまではまったく考えてませんけど。……せきちゃんはなんでもつくるけど、食べ物はつくらないんですか?

関田 つくってみたいんですけど、自信がないんですよ。あと、虫が嫌いで。

根岸 ははは。意外だなあ。 まあ、僕も虫はあんまり好きじゃないけど。

関田 おじいちゃんと親が畑をやっていたんですよ。だから子どものときは虫も触ってたし、慣れてるはずなんですけど、あるとき突然、虫が気持ち悪い!って思うようになっちゃって。感性が変わったのかなあ。

根岸 じゃあ、それこそお金稼がないとじゃないですか。虫触らなくて済むように。

関田 そうそう。だから、ヤバイんですよ。虫を触らず、血も見ないで済むように、お金を稼がないといけない……まあ、ほんとに追い込まれたらやるんでしょうけど。

根岸 僕もやる必要に駆られたらやると思います。でも、今は以前ほどやらなくちゃいけない理由は感じてないかなあ。

関田 感じてたんですね。

根岸 ローカル取材でいろんな思想の人たちに出会ったからですからね。自分もできることからやっていかないと、みたいに思っていた時期はあったんです。今思えば、あのときはまだ頭がカチカチだったかもなあと。

関田 わかりますよ。思想は大事なんだけど、あんまりひとつのことに固執しすぎると視野が狭くなることもあるから。

根岸 何が「正しい」とかないなって思うんですよ。「正しさ」っていうのは、自分のなかにしかないから。

根岸 そういえば、ここに来る途中、団地のなかにおもしろい酒屋さんがあったんですよね。外にテーブルを出してて、そこで飲めちゃうような感じの。

関田 ああ、広島屋のことですかね。行ってみます?

根岸 今日はもうおしまいということにして、ビールでも飲みましょうか。

根岸 谷保、いい感じの街ですね。

関田 谷保はね、大好きなんですよ。

根岸 これから家を建てたり、子どもが生まれたりしたら、またいろんなことが変わっていきそうですね。

関田 うん。どうなるか全然わからないけど、元気に楽しくやっていけたらいいなって思ってます。

文/根岸達朗 写真/松岡真吾

ラマパコス

Web site:http://lamapacos.net/

根岸達朗

ライター。1981年東京生まれ。編集プロダクション勤務を経て、2012年に独立。Web、雑誌、フリーペーパーなど、さまざまなメディアでインタビュー、エッセイを執筆している。
Twitter:onceagain74
Facebook:tatsuro.negishi

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