追いかけて、柴崎分水 〜立川の発展と2つの分水路〜

最近、趣味の多様化が進んでいる気がする。少し前まで「暗渠巡り」なんてものは、ニッチ中のニッチだったはずなのに、テレビや雑誌でも取り上げられ、知名度を上げている。
そもそも「暗渠」ってなに?と聞かれることのほうが多かったのに、趣味として認められはじめていて、私の中では「カフェめぐり」と同じくらいの知名度なのではないかと思いこんでいる(たぶん違う)

念のため暗渠について説明しておくと、「地下に設けられていて外からは見えない水溝」のこと。もっと簡単にいうと、水が流れていたところに蓋をしたところ。現在も水が流れているところもあれば、今はすでに水が流れていないところもある。

水の流れには、大きく分けて、自然に出来たもの(河川)と人工的につくられたもの(水路)の2つがある。個人的には「水路」の方に心惹かれる。人々が地形など様々な事情を考慮しつつ、考えに考え抜いて「ここしかない!」と決めてつくられる水路はたくさんの思いが交錯していて、ロマンを感じるのだ。

とくに灌漑や水道として使われる「用水路」が一番好き。普通、川といえば谷筋に流れているので低い場所を通るが、用水路は高い場所から下に向かって水をおろしていくので、尾根上に流れている。台地を上りきってそこに水が流れていたらそれはほぼ用水路だ。

代表的な用水路には「玉川上水」がある。江戸の飲用水供給を目的に、羽村の取水堰から四谷まで43kmに渡って築かれた上水道だ。

玉川上水からは、灌漑目的で33の分水が作られ、立川市からは「柴崎分水」と「砂川分水」2つの分水口から水の流れがはじまっている。今回は、「柴崎分水」の方を辿ってみることにした。

柴崎分水は、現在の立川市域の南側にあたる柴崎村の生活用水・農業用水のために開削された。砂川分水は玉川上水ができてから3年後に作られたが、柴崎分水は80年ほど遅れて開削されたらしい。出遅れ方が半端ない。

出遅れといえば、北(砂川村)と南(柴崎村)の立川市発展にまつわるエピソードがある。
明治22年に甲武鉄道が開業し、新宿ー立川間を開通。当初の予定では、立川駅は南側に建てる予定だったらしい。しかし、実際には北側に建ち、必然的に北口側が発展していった。

なぜ予定とは違う北側になったのだろうか。謎を紐解く一つの要因が2つの分水路の存在だ。

たかが水、されど水。少し出し渋った結果が、街の発展を左右してしまった。柴崎分水をすんなり甲武鉄道に分けていれば、今頃は南側が街の中心だったのかもしれない。

柴崎分水巡りスタート


柴崎分水は松中橋で玉川上水から分水されている。「砂川分水」も同じところから分水していて、右が柴崎分水、左が砂川分水の水門だ。


砂川分水はしばらく玉川上水に沿って流れていく。樹々に覆われたおだやかな遊歩道が整備されていて思わずこちらを歩きたくなるが、今回は早々に玉川上水と別れを告げて南東へと流路をとる柴崎分水沿いを進む。

しばらくはとうとうと流れる水を間近に眺めることができ、長閑な雰囲気が漂う道沿いを歩く。素掘りの水路が地方の田舎っぽい雰囲気を演出しているのか、ちょっとした旅気分。


しばらく進むと、大通りにぶつかる。それと同時に水路は道路の下へと姿を消してしまう。ここから暗渠区間がはじまる。道の反対側に車止めとタイル敷きの遊歩道が見える。この下を柴崎分水が流れているのだ。

タイルとアスファルトの2色使いの不自然な道や車止めは、「暗渠っぽさ」を見分ける要素の一つだ。
暗渠は水路を埋めたり蓋をしたりしている道のため、車が入ってこれないよう車止めが立てられていることが多い。暗渠を守るための門番のような存在なのだ。

細い遊歩道を抜けるとまた大通りにぶつかる。ここから先は昭和記念公園の敷地の中へと入っていく。



水路を追って、昭和記念公園へ入園。見頃のイチョウには目もくれず、残堀川に沿って流れているはずの柴崎分水を探す。ふかふかの地面が気持ちよく、平日の昼間にただ散歩をしているという罪悪感がまた心地良さに拍車をかけていく。


残堀川沿いをてくてく進むも、柴崎分水らしき跡が見つからない。だんだんと不安になってきた頃、突然鉄柵の蓋ゾーンが現れた。

これが柴崎分水だ。しばらくぶりの再会に嬉しくなって、柵の隙間を覗き込んでみると、ざぶざふと水が流れていた。この先も姿を消したり、また鉄柵越しに現れて見たりと思わせぶりな態度をとって心惑わせてくる柴崎分水。


柵越しのチラリズムにときめきながら、水流を追いかけることしばらく。ついにまた全貌が明らかになる。「わんぱくゆうぐ」のあたりから、園内の景観を彩る様に悠々と流れ行く。


一見すると注意書きの立て札の様な分水についての説明板が暗渠からの出口付近に立っていた。

この先、ふれあい橋付近で再び地下に潜り、公園を抜け出て行く。

昭和記念公園には、たまに訪れているが季節の花やイベントに夢中で、こんなにも分水を堪能できるスポットだったなんて知らなかった…。今はちょうど紅葉まつりをやっているし、12月になればイルミネーションもはじまる昭和記念公園。華やかなイベントの影に隠れて、分水は密やかに流れ続けている。

公園を抜けてからもまだまだ見所がたくさんある柴崎分水。
誰にも求められていない気がするが、長くなってきたので続きは次回お届け。

文・写真/一楽まどか

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