商店街のパフォーマー、老舗酒屋店員のカチューシャオブジェ

村田さんに出会ったのは、地域誌たまら・びの商店街の取材の時。ふらっと立ち寄った谷保駅近くの商店街「むっさ21」の老舗酒屋、広島屋さんにて。
その時はちょうど七夕シーズンだったので、カチューシャには堂々とボリューミーな織姫、彦星が鎮座していて、2度見、どころか5度見、6度見してしまうほど、私の目は釘付けに。
恐るおそる(失礼!)話しかけてみると、とっても気さくなお方で、ハートも鷲掴みにされてしまいました。
その時取材した誌面ではワンカットのイラスト紹介のみにとどまってしまったのですが、その後もずっと村田さんのことが気になり、今回、念願叶ってカチューシャのひみつをじっくり聞いてきました。

———村田さんは広島屋さんに勤めてどのくらいになるんですか。

「もう25、6年パートとして働いてますね。働き始めた当時お母さんと一緒に来てた子が、今は子連れで買いに来てくれてたり。国立に住み始めてからも40年くらいになるね」

———カチューシャをつけるようになった最初のきっかけが知りたいです。

「5年前のクリスマスに、電柱にぶつかってメガネが壊れまして。
近くのメガネ屋さんがお休みだったので、修理に立川まで行ったんです。その待ち時間にたまたま隣の雑貨屋さんのトナカイの耳のカチューシャが目に入って、クリスマスだし、お店のスタッフとみんなで付けたいな、と思って買って帰って。
けど、他のスタッフはやはり恥ずかしいということで、ひとまず私だけトナカイをつけて働いてました。そこからですね」

———ひょんなことがきっかけだったんですね。 それからずっと継続しているのがすごいです。

「それにはわけがあって(笑)。
クリスマスが終わった頃に、ドールハウス作家でもある夫が、次は何にするの?
と言いはじめて、お正月用に鏡もちと門松のカチューシャをつくっちゃったんですよ。
ちょっと、これはさすがに恥ずかしいでしょう…(笑)と思ったんだけど、せっかくつくってくれたので試しにつけてみたら、意外とみんなの反応が良くて。
それを皮切りに、バレンタイン、ひな祭り、お花見、こどもの日…、と季節ごとにつけるようになったんですよ。
そんな流れで、もうちょっとやってみようという感じで、今まで続いてます(笑)

———カチューシャはずっと旦那さんがつくっているんですか?

「いや、それがそのあとすぐに素敵な出会いがありまして。
カチューシャをお店でつけはじめて少し経った頃、谷保駅の近くのショーウインドウに飾ってあった布作品がとても可愛いかったので、これだ! と思いまして、その作者である三田さん(谷保駅前の和装小物屋「風」の店主さん)に頼んだら二つ返事でOKしてくれて。それからはずっとその方がつくってくれています。
舞踊の先生だけあって素材もちりめんが使ってあったり、どれも繊細なつくりで、いつも想像以上の出来栄えなんです。毎回、出来上がりがかなり楽しみです」

ではここで、これまでのカチューシャコレクションをご紹介します。
季節のイベント × 5年。今ではかなりの数になっているそうで、この日、大きな紙袋2袋にも、入りきらないほどのカチューシャをお店から持ってきてくれました。その中の一部です。

お花見のカチューシャ。紙ねんどでつくられた猫たちが酒盛り。お寿司皿の芸の細かさに脱帽。

七夕のカチューシャ。短冊にはしっかり願いごとが。「みんなげんきでくらせますように」「ラッキーが長生きできますように」

申年お正月バージョン。こちらも精密につくられた酒樽が。ちゃんと“ひろしまや”の店名が入っている。 お餅の上にはバナナも。(かぶっているうちに先端は欠けてしまった)

こどもの日バージョン。重量感のある鯉のぼりと、金太郎。

こどもの日バージョン。重量感のある鯉のぼりと、金太郎。

———結構、ボリューミーですね。1日つけるとなるとちょっと重く感じたりしませんか?

「そうなんですよね(笑)そんな時は、三田さんが改良してくれます。
今では見た目は大きく見えるものでもかなり軽量化されていたりして、カチューシャ、どんどん進化してますね」

———店頭での反応はどうですか? もはや、まちの名物になっていますよね。

「季節ごとに変えているので、次は何かな? と予想して楽しんでくれる人もいたり、このカチューシャのモチーフに季節を感じると言ってくれる人もいますね。
近所の、毎日お店の前を通る中学生たちは“かんむりおばさーん”って声をかけてくれたりね」

そのほか、配達先のお客さんも村田さんの登場を心待ちにしている人がいたり、自らカチューシャを制作して、これを是非つけてください、と持ってきてくれる人もいるんだとか。

最後に、カチューシャ制作、三田圭子さんに村田さんのことを聞いてみました。

「普通、人をにっこりさせることってなかなかできないですよ。それがもう全然平気で、カチューシャつけて自転車こいだり、病院への配達も行く姿を見てね、これはすごいよと。失礼だけど最初は変わった方なのかなぁと思ったんだけど(笑)、これまでずっとお付き合いしてきて、“こんな人はいない”と思うようになりましたね。つくらせていただけるもありがたい話でね。私も楽しんで制作してます。ほんと、村田さんは人生、楽しんでるよねぇー」

季節のカチューシャをつけ始めて5年。
村田さんの存在感は、じわじわとみんなのこころのなかに足跡をのこしています。

文・写真/三森 奈緒子

広島屋

国立市富士見台1-17-125むっさ21内1F
042-572-7933
10:00~20:00 年中無休
http://hiroshimaya.tokyo.jp/

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