小窓のむこうの密かな名店「麦屋」の麦焼き

「麦屋」は、京王線高幡不動駅北口のすぐ近く。通るたびに気になっていた、このお店。10年越しに、ついにお店のベルを鳴らす。

自宅の一角がお店になっており、来店時にはドア脇のインターフォンを押す。

チャイムの音が響くと、奥から「はーい」との声が。現れたのは、店主・植村豊明さん。若干緊張しながらメニューを見ると、いろいろとおすすめを教えてくれ、心もほぐれる。看板メニューであるという「麦焼き(トマト)」200円と、相性がよいという「チャイ」180円を注文。

テイクアウト専用だが、目移りするほどメニューが多い。

すると、「いらっしゃいませ」と奥様・律子さんも登場。結婚30年、さすがのコンビネーションで調理に取り掛かる。

チャイを煮出す豊明さん。気になるのは可愛い背中のワッペン。

チャイは、カルダモンやシナモン、ジンジャーなど6種のスパイスをブレンド。注文の都度、茶葉を煮出してくれるため、香りも味も濃厚な一杯に。完成が近づくと、良い香りが鼻をくすぐる。

麦焼きを作る奥様の律子さん。とっても気さくで優しく、律子さんに会うために足を運ぶ人もいるとか。手にするトマトフォンデュは、豊明さんお手製のソース。フランス料理店のシェフの経験を持つ豊明さん。ソースにもこだわりが詰まっている。

麦焼きは、一見小さなピザのようだが、全粒粉を使ったパリッと香ばしい生地が特徴。インド料理の「チャパティ」をヒントに、植村さんが考案したものだ。焼くこと5分ほど。熱々の出来上がりを早速いただく。

テイクアウトしたものは、外のテラスでも食べられる。

まろやかなトマトフォンデュの味は、言わずもがな、チーズとの相性が抜群。そこに生地のパリッとした食感と、全粒粉の味が加わるから尚いっそう美味しい。スパイスの効いたチャイとの相乗効果もあり、あっという間に平らげてしまう。

美味しさの余韻に浸っていると、近くに住むという大学生のお客さんが。気の知れた仲なのだろう、豊明さんと会話が弾んでいく。

「学生のお客さんも多いよ。みんな、初めては勇気がいるっていうけど、一回来ると、卒業まで通ってくれる」と豊明さん。まるで親戚の叔父さんのように、勉強や進路の相談に乗ってくれるらしい。

すると今度は、下校途中の小学生が「こんにちは!」と手を振りながら通り過ぎていく。

「あの子は小さい頃から来てくれていてね。もう少しで4年生なんだ」
目を細める豊明さん。駅前の一角に佇む小さなお店の根が、深くこの場所に根付いていると感じる瞬間だった。

一度行くとまた会いたくなる、植松さんご夫婦。

お手製の木の看板が目印。ちなみに店名は愛猫の「むぎちゃん」から。

写真・文/佐藤琴音

麦屋

日野市高幡528-6
京王線高幡不動駅徒歩すぐ
042-593-2142
木休
7:00〜19:00

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