愛されソウルフード 小平のポーズやき。

とある小平出身の男性に、モーレツな熱弁を受けてからずっと気になっていた「ポーズやき」。安くて、美味しくて、これがないとはじまらない、というくらい通い詰めたと。その表情と語り口があまりに本物で、印象深かったのだ。それから数ヶ月。ついに、お店に訪れることができた。

「こぶたちゃんがポーズとってるんだよ」型には、しっかりと名前が刻んである。

店主の吉田昭八郎さん。昭和八年生まれだから、昭八郎。進駐軍のバーでバーテンとしてカクテルを振舞っていたこともある84歳。一橋学園駅から徒歩15分のこの場所にお店を構えて44年。たまたま出会った焼き物の型に“ポーズやき” って書いてあったから、そのまま名前を頂戴したのだそうだ。

「全部で10種類だよ、シンプルポーズ(豚肉・キャベツ・長ネギ・あげ玉)が一番人気かな。さ、これを食べてみて」
差し出してくれたのはマックスポーズ(粗挽きポークウインナー・チーズ・マヨネーズ)。

いつもはお持ち帰りのみだが、特別にお皿に乗せてくれた。お好み焼きみたいでおいしい。腹持ちもばっちり。おやつにもいいけど、ちょっとした食事にもなりそうな食べごたえ。
具沢山も嬉しいし、何より、生地の味が濃厚で、しっかりしている。
「うちは、次の日冷めてもおいしい、それでお客さんが来てくれるの。冷めても味はほとんど変わんないよ」
そう言って見せてくれたのが、こちら。

鶏ガラ、豚骨、カツオと煮干しの出汁。小麦粉を溶くベースのスープに、これでもか!
とたくさんのうまみが詰まっていた。じんわりと、深みのある美味しさのひみつ。


「こうやって、いっぺんに9種類のポーズやきを作るんだけど、具を入れてその上に生地のせちゃうとあとは記憶力との勝負。カードを9枚開いて、ここは何、って当てるのと一緒。それがわかんなくなっちゃったら、お店を閉める時かなー」
今はまだまだ余裕の84歳。すごい記憶力だ。

そんな話をしているうちに、常連さんがやってきた。

「こんちはー、Mタコと焼き鳥ある?」
「小学校に上がる前から通ってます。もう30年以上だね」

「たい焼きくださーい」
そのあとも、ぽつりぽつりと地元のお客さんがやってくる。

結構長居してしまったので、そろそろおいとましよう、とポーズやきを注文しながらふいに、80代ってどんな感じですか?ときいてみた。
「気付いたら、80になってた、って感じだね。年だとか、そういうことは全然感じないままに気づかないうちに年をとっていくよ。気持ち的には30代後半くらいから変わんないね」と昭八郎さんは笑った。私は今ちょうど30代なかば。不思議な気持ちになった。
そして、取材だから、と注文したポーズやきを全部プレゼントしてくれた。

そのあと、白い、お餅みたいな皮のたい焼きも食べさせてくれ、おみやげももたせてくれた上、最後に、
「なんかソフト(クリーム)も食べてく?」

おみやげももちろん嬉しかったけど、言葉の端々にじみ出る、長く生きている人にしか醸せない優しさに包まれて、駅まで半分浮いているような足取りで帰った。これくらい、何か気持ち的に優しさムードをお裾分けできる人間になりたいなぁ。
昭八郎さん、ごちそうさまでした!
また来るね。

写真・文/三森奈緒子

なにわや

11:00〜19:00
水曜休み
小平市学園西町2-9-20
西武多摩湖線一橋学園駅12分
042-344-1962

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