可愛さあまって看板どうぶつ 001「カフエー黒猫」のフライデー

お店:カフエー黒猫(八王子市)
種別:ねこ
性別:男の子
名前:フライデー
愛称:デーちゃん
年齢:10歳
すきなこと:澤入さんのブラッシング
日課:庭のさんぽ、常連さんのお出迎え

こんにちは。とステンドグラスが美しい秘密の扉を開けると、はじめましてにもかかわらず、さっそくふくらはぎに頬をすりすりしてくれたフライデー。猫好きにはたまらない最高のお出迎えに、のっけから心を全部もっていかれる。そんなとても人懐っこいフライデーが暮らすのは八王子の一軒家バー、「カフエー黒猫」。今年の5月5日で32周年を迎える、老舗のお店。

蔦に覆われた建物に、消えかかったカフエー黒猫の看板文字。その不可思議なムードから、なかなかはじめの一歩は勇気がいるかもしれない。けれど、いざ中に入ってみると、木のあたたかみある空間にフランスや日本を中心とした骨董品たちが並び、澤入さんの醸し出すほんわかした雰囲気が心やすらぐ、ほっとする場所だった。バス通り沿いにあるとは思えない、唯一無二の時間が流れる。

「20、30年気になってたんだけど、やっと入ってみましたって方も結構いますよ。そんな方には “勇気を出して入ってくれてありがとう”って声かけますね(笑)。中国に “壷中の天” 壷の中の世界があるということわざがありますけど、そんな感じになるといいなと思って」

左:さりげなく飾られているラリックのランプスタンド。右:アフリカのお祭りで実際に使われた骨董のお面。

そこここに澤入さんのコレクションがちりばめられていて、まるで博物館のような店内。

店名の「カフエー黒猫」は看板猫に由来していない。フランスの文学酒場キャバレー、「ル・シャ・ノワール(黒猫)」から。最初は看板猫がいなかったそうだが、開店して1年を過ぎたころ、もともと猫好きの澤入さんは偶然にも黒猫の迷い猫の世話をするようになった。フライデーは4代目。飼えなくなった方から預かることになったのが今に至るきっかけだ。

お店でも家でも一緒。ロビンソン・クルーソーが無人島で出会い、その後一緒に旅をする相棒の名もフライデー。名前は物語から付けた。そんな風に、澤入さんの暮らしの軸にフライデーは存在している。

「この子は特にすごく一緒にいやすいですね。ブリティッシュショートヘアの特徴で鳴かない、かまない、爪たてない、ってのがあるんですよ。本によると“いつも役にたちたいと思っている”なんてことも書いてありましたね(笑)。僕が目をこう、しわーっとウインクさせるでしょ、“すきだよ”とやると、フライデーもウインクしかえすんですよ。ちゃんと目を細めてくれてね。知らない野良猫にもこれ、いつもやってみるんですけど」

その瞬間を写真におさめられなかったのが残念だが、何回も目をきゅっと細めていたフライデー。ちゃんと通じ合ってるんだなぁ、とほのぼの。

「いろんなお客さんがかわいがってくれるから、フライデーも安心して逃げないんですよね。しょっちゅう来てくれるお客さんがみえる時間になると、ドアの前で待ってたりもするんです。これまで、食器をひっくり返すこともなくて、グラスとグラスの間をすいすいとスラロームしていくんです。器用ですね。フライデーに会いにくる人も多いですよ」

フライデーの特等席。「こうやって足を組むと、その隙間にぴったりおさまるのがいいみたいですね」

「この格好が大好きで、よくするんですよ。ただ、このあと絶対むせるんですけど(笑)
やめなさいって言うんだけど、好きなんですよねー、椅子の下が」

なんてかわいいんだろう。椅子の横木にからだを預ける姿に見惚れてしまう。フライデーはこの姿勢のまま、くつろぎだしてくるくると瞳を動かしている。しばらくじっと見ていると、ふいに立ち上がり、やはりむせはじめた。毎日これを繰り返しているらしい。

玄関のそばにある爪とぎで削れてしまった柱は、代々の看板猫が暮らしていた証。フライデーと澤入さんは今夜も美味しいお酒と一緒に、お客さんをもてなしている。

猫背矯正中!

写真・文/三森奈緒子

カフエー黒猫

17:00~翌1:00
東京都八王子市日吉町18-6
042-622-9790

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