土手に現れるウワサの駄菓子屋「趣味の店はしもと」 

京王線高幡不動駅から歩くこと5分、街のランドマーク「ふれあい橋」が見えてくる。浅川をまたぐこの橋は、歩行者専用で駅へのアクセスも良く近隣住民にとっては重要な生活道路。
この橋を渡りきった先に、時折、駄菓子屋の移動販売車が現れるという。その名も「趣味の店 はしもと」。
なぜ、土手に? そしてなぜ「趣味」なのか?
謎めくお店を訪ねてみた。

「ふれあい橋」は富士山と夕陽が見える、この街の絶景地。

ふれあい橋を渡りきると見えてきたのは、色とりどりの駄菓子を載せたコンパクトな3輪車。
そして傍らには、店主の橋本さん。陽だまりのような優しい笑顔が目をひく。

3輪車の荷台には駄菓子がいっぱい。子どもがのぞきやすい高さだ。

「しばらくお休みをしていたんだけどね、最近、再開したんだよ」

足を痛めてしまってね、と膝をこすりながらも、再開の意欲がにじむ、きりりとした表情。現在は主に金曜~日曜・水曜の週4日、移動販売に訪れるという。
営業日には11時頃に自宅を出発。3輪車に乗り、自宅から1時間をかけて土手に到着し、12時から16時頃の約4時間、屋外で販売を行う。もちろん雨天はお休み。近くの公園もまわるという。

「子どもたちの放課後に合わせてここに立ってるよ。下校の時にはお金を持っちゃダメらしくてね、みんな一度帰ってから来るんだよ」

すると早速、子どもたちがやってきた。

3輪車と黒めがね、帽子が橋本さんのトレードマーク。

「こんにちはー!」
「ああ、今日は早かったね」

慣れた様子で、橋本さんとおしゃべりしながら駄菓子を品定めする子どもたち。
いつも来るのだろうか? 女の子に話しかけてみた。

「この辺で遊んでて、駄菓子屋がいる!って気づいたらいつも来るよ。なんだか親しみがあるし、昔ながらって感じで好き。駄菓子はここでしか買わない」

ここは、子どもたちが友だちと遊びながら立ち寄れるスポットらしい。大人で言うと「ちょっとそこでお茶していこう」という感覚だろうか。一人で来る子どもは稀で、多くの子は「これ、一緒に食べよう」と、誘い合いながら駄菓子を買っていく。

ほとんどの駄菓子は1個35円、3個で100円という、子どもの財布にも優しい値段。駄菓子が詰まったお楽しみ袋100円も。

そして、あれよあれよと言う間に子どもたちが増え…
気づけば子どもたちに囲まれ、橋本さんの姿が見えなくなるほどに。
大盛況である。

子どもたちが意気揚々と駄菓子を買っていく。

大きくなったなあ、もう6年生か、と一人の男の子に声をかける橋本さん。
孫を見ているような目が、とても優しい。

「子どもたちが集まってくれるのが嬉しいね。来るのは主に小学生。1年生が2年生になって、2年生が3年生になって…子どもたちの成長も楽しみにしてるんだ。みんな中学生になると、ここも卒業しちゃうんだけどね(笑)」

その後も、駄菓子に、素朴な佇まいにひかれたのか、道行く大人たちも思わず足を止めていく。

懐かしさのあまり、ついつい買ってしまう大人も多数。

長年、サラリーマンをしていた橋本さん。リタイヤしてから、パッチワークが趣味の奥さまが営む小さな手芸店を手伝いはじめた。子どもたちが来るからと、駄菓子をお店の片隅に置き始めたのが、駄菓子屋のはじまり。奥さまの趣味が高じてできたお店がきっかけだから、今でも店名は「趣味の店」なのだと言う。

「気がついたら、駄菓子屋になっていたよ。移動販売もちょっとした思いつきだったんだけどね、店舗がなくなってからは、これが主になっちゃった。今じゃ僕の趣味は、駄菓子を売ること。できるだけ長く続けたい」

そう言って、橋本さんはにっと微笑む。

道端に現れる小さな駄菓子屋。
そのノスタルジックな佇まいには、飾らない素朴な魅力があるようだ。

日が傾き始めると、今日はおしまい、と子どもたちに一声。
じゃあね、手を振ると、その姿がゆっくり橋の向こうに遠ざかっていった。

文・写真/佐藤 琴音

趣味の店 はしもと

金曜~日曜、水曜 12:00~16:00頃
ふれあい橋、浅川グランド、大木島自然公園(日野市満願寺6-6)付近

Share
Share
Share