アラハンに会いにゆく。 東村山のカメラコレクター 仲清さん編

アラハン。ここ数年世の中に浸透しつつある100歳前後世代の呼称。100年ってどんな感じなんだろう。 長生きの秘訣の健康法を探りたいのでもないし、崇めたいのでもない。ただ、100年近く人生を生きてきた方のお話を対面でうかがってみたい。そんな思いを忍ばせ、今日は東村山にやってきた。

 「私は、仕事も人生もついてた。しかも95歳まで生きられた。これも一つの運でしょうね」
仲 清(なか・きよし 95歳、大正10年生まれ)


大きくてハリのあるお声に好奇心いっぱいの眼差し。まるで95歳には見えないですね、と私がつぶやくと、「見えないのはね、消化器が人より丈夫だからですよ。好き嫌いなくなんでも食べますから」仲さんの元気いっぱいの返しに、早々にこちらも気持ちが丸くなってゆく。

カメラや蓄音機のコレクターである仲さん。ご自宅の敷地内にあるはなれには、1階にも2階にも博物館と見まごうほどぎっしりとコレクションが並ぶ。


ガラスに版をつくる乾板写真機、上から覗くタイプの二眼レフや、スプリングカメラ、ボックスカメラ。合計で約400台(!)あるという。


アメリカからカタログで個人輸入することが多いとのことで、「ダンボールの箱を開ける瞬間は、毎回非常に楽しみですね。実際にどんなのが出てくるかなってね」と仲さん。

ダゲレオタイプと言う撮影法で撮られた、1856年のアメリカの銀板写真。

コレクターになってからはほとんど撮影はしなくなったそうだが、昭和の初期、まだ戦況が悪化する前はカメラ少年だった。「私は末っ子の6男でお袋が43の時の子ですから、もうペットみたいにいつも連れて歩いてかなり可愛がってくれましたね」と、かなり高価だったスプリングカメラも、お母さまが貯金をおろして神田のカメラ屋さんで買ってくれたそうだ。
「街を歩いてこれは!と思ったらシャッターを押してました。村山貯水池や西武線の鉄道、小学校。所沢~秋津間の衝突事故の写真も撮りに走ったこともありましたよ」
その当時、東村山駅周辺は一面麦畑、電灯もなく夜は真っ暗で追いはぎも出たんだとか。写真といえば家族の記念写真。そんな時代、仲少年が散歩しながら撮影をしていると街の人も振り返ったそうだ。押し入れを暗室にして自分で現像もしていた。その頃の風景写真は現在、ほとんどが「東村山ふるさと歴史館」に展示・保存されている。

一番お気に入りの写真。後川(北川)での水遊びの様子。昭和18年撮影。戦時中で物資不足、フィルムもなかったので大切にシャッターをきった一枚。

カメラを収集しはじめたのは、50代になってから。少年時代高価で手に入れられなかったドイツ製のライカや、二眼レフのローライなど、当時の高級機への憧れからだ。通産省の技官を退職してからはさらに時間を費やした。これまでにカメラに投じた金額は1,000万から2,000万(!)。今年の春には、7~8年かけてワープロでコレクションについて綴った文章を、1冊の本にまとめた。

今年の春に自費出版した「寫眞機(しゃしんき)と蓄音器 マイコレクションから」(円窓社042-306-3771)、左はふるさと歴史館で販売している冊子。

「私は、ついてたんだ。尋常小学校を卒業した後、陸軍航空学校に行ったおかげで、航空整備員になったことから、通産省の機械試験所に航空機整備員として技術職として入れたんです。その頃太平洋戦争がはじまったんですが、飛行機の世話をさせとくのが本業だろうと昭和20年まで召集が来なかった。軍隊に遅くまで行かなくて済んだんです。それに、お見合いをしたカミさんとも出会った瞬間に西部劇の話で意気投合して3時間話がとまらなかったなんてこともありました。これまで入院したこともないし、精密検査受けてみたらそれが原因でかえって具合悪くなってしまったくらいで(笑)。95歳まで元気で生きられた。これも一つの運でしょうね」


「でも最近は、五感がすっかりだめになってきたね。蓄音機の音を聴くのも、カメラの修理で細かい部品を見るのもできなくなってきて、機械関係に関心がなくなってしまいそうですよ…」
少しだけがっかりした表情をみせた仲さんだったが、次の瞬間、

「でもね、2、3年前から 絵を収集しはじめたんです。絵は見てるだけでいいなぁと思えるし、もう消去法でいくと、絵になったんですよ(笑)。いつかコーヒー屋さんに無償で貸したりできたらいいなと思って。目の前に綺麗な絵があればお客さんがもっとくるかもしれないし。今買っている絵がだれかに喜んでもらえたらと。まだ元気なうちはどんどん集めたいですね。自分のためでもあるし、誰かのためにもなれば」

人物画が多い。おもに無名の作家の絵を買うという。

「(インタビュー)1回じゃ、足りないかなぁ」と仲さん。確かに、仲さんの人生については少なくともあと3回くらいはお会いしないと詳細までつかめない気がする。まだ一度しかお会いできていない中で記事にさせてもらって申し訳ないのだが、仲さんに実際お会いして驚異的な内なるパッションは存分に感じることができた。「ついてる」と何度も言っていた仲さん。ガハハと笑い、大好きなものに囲まれて夢中になり、楽しいことでいつも頭がいっぱい。

リンダ・グラットンのベストセラー『LIFE SHIFT』の中で人口学者の研究によると、この先平均寿命は10年ごとに2〜3年のペースで上昇していくらしく、例えば1987年に生まれた人の50%が98〜100歳まで、2007年生まれの50%が104歳くらいまで生きるのだという。あくまで推測ではあるが、もしかしたら現代を生きる私たちの半分はアラハンになれるのかもしれない。

私も仲さんのように、“ワクワク”を100年持続させて生きていきたいなぁ。

写真・文 三森奈緒子

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