街を泳ぐ、夏の鯨。昭島市くじらパレード

東京都昭島市はくじらの街だ。
路上を歩けばマンホールや駅前のオブジェなど、様々なところでくじらの姿を見かけるし、くじらを模したお菓子や「くじら運動公園」なんて公園まである。
というのも、これは遡ること昭和36年の8月20日、市内多摩川・JR八高線鉄橋の下流からほぼ完全な形で全長16メートルのくじらの化石が発見されたことに由来する。調査の結果、現存のものと異なる完全な新種と分かり「アキシマクジラ」と命名、以来昭島市は「くじらの街」として知られることになった。

昭島市の夏は、くじらカルチャー全盛の季節。毎年、2日間にわたり行われる「昭島市民くじら祭り」は多摩のみならず都心からも多くの人々が訪れる。打ち上げ花火が行われる初日の夜もひときわ賑わうが、地元民にとって、祭りの目玉は2日目の「くじらパレード」。巨大な風船状の青いくじらが昭島駅から東中神駅にある昭和公園を目指して悠々と街を泳ぐ。一年に一度しか見られないこのくじらの遊泳を見るために、路上では老若男女の昭島市民が待ちわびる。道路の真ん中に立つ浴衣の子供が、「きた!きた!」と嬉しそうに跳ね回る。

沿道の人々は知り合いの姿を見つけては、名を呼んで手を叩く。
巨大なくじらは目の前で見るとどうしても笑ってしまい、
通り過ぎた後の路上には平和なムードが残り香のように漂う。

160万年前、はるか昔にこの大海で泳ぎ周っていたアキシマクジラ。
時代を超えて一年に一度、昭島の街を人々に見送られながら気持ちよさそうに泳いでいる。

写真・文/松岡真吾

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